旅人の和歌帳 6

「私の旅日記」と併せて、ご覧下さい。

 ビリケンに幸福託す浪速人老いも若きも通天閣かな
 道頓堀来てみてはしゃぐ東京人心境語るグリコの看板
 昼餉時ふわトロたこ焼き格闘す東京人(よそもの)隠す道頓堀かな
 鼻の穴潜るを笑い写真撮る「撮るな撮るな」と表情も笑み
 忘れ物手摺りに掛けしこの傘の露に濡れつつ我は旅路か
 春薄き伊賀の上野の朝霧のホットミルクティー温き息吐く
 八重桜散りて降る雨佐那具かな
 隧道の対はお伽か深霧の大河原抜け笠置の花かな
 大河原ICカード使えずに都会の知識使えずも良し
 伊賀上野洋食屋でのハンバーグ雨止み嬉し一杯の珈琲
 朝顔や政党ポスター飾り隠す
 夾竹桃水路のボート盛夏の絵
 パサパサと夏草を刈るローカル線
 館山や蜻蛉も泳ぐ空と海
 蝉時雨長き時季待つ枇杷農園
 木更津のやっさいもっさい黄昏に旅人の朝もやっさいもっさい
 鎌取や緑に驚き誉田土気千葉市の内かと驚く緑
 ローカル線満員御礼缶麦酒マリンスポーツ真夏の宴
 田舎駅停まりしタクシー運転手団扇で扇ぎて客を待つ時
 娯しかな日陰でスマホ休憩時
 海水浴夏の旅人彷徨い靴
 勝浦の高級ホテル夏休み家族連れの桃源郷かな
 艶やかな姿形のフラミンゴ再就職の目途は問う我
 「今でしょ」と流行りで誘う海の家
 撮り鉄を彩る向日葵ほら満開
 晴れ名古屋伊吹の麓は曇りなりこれも分け目の関ヶ原かな
 花魁に見取れて後に京舞妓項に舞ひ降る一葉の紅葉
 嵐山過ぎ行く人の外国人互ひに娯しまん京の秋模様
 嵐山賑やかな地に身委せば長閑に安らぐ馬堀の郷
 四季折々人訪れし京都駅貨物列車は四季には無情
 来た人も発つ人になる清水で宴終わりし悟り持つべし
 予想外迎えし紅葉築地かな
 待つ程に旨し築地の中華そば席を譲りし此処では友達
 あの頃の稲毛を想ふ碧い空三十路になりても旅はいい物
 嗚呼稲毛我を迎えし碧い空回想娯しき初めての旅
 新しき観光船追う冬鴎啼きて求むる客からの餌
 珍しき港撮せど偶然の撮らず悔しきギリシャ船かな
 ギリシャ船偶然撮れて大歓声十八年前の悔しさ晴れし
 稲毛でも千葉みなとでもスカイツリー対では如何か見えるか京葉
 撮れずとも黄昏愛でし冬の猫
 師走旅特急列車を帰路に充て大いに褒めよ戻りし笑顔
 舞浜の百花繚乱冬合戦旧江戸川の屋形舟かな
 柴又で寅さん客人出迎えり発ちか帰りか心の旅路
 初詣成田か柴又泣き別れ京成線内呉越同舟
 御前様源公探す題経寺胸躍らせよおみくじ大吉
 野菊枯れ漣立たぬ江戸川の冷水掻き行く渡し舟かな
 渡し舟スカイライナー冬晴れの旅路の優劣付けるべからず
 冬雲の如し気侭な我が旅ぞ
 柴又駅寅さん気取りで就く旅路


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