旅人の和歌帳 6


 来た人も発つ人になる清水で宴終わりし悟り持つべし
 旅日記に掲載されていないが、清水坂での一首。
 最初から来たのか、京都を発つ前なのか、何時も観光客で賑わっている清水坂。しかし、誰でも此処を発つ人になるのだ。それは、此処清水で麗しき京都観光が終わることを覚悟しなければいけないのだ。
 予想外迎えし紅葉築地かな
 築地での一句。
 紅葉の時期が終わり、冬本番。そんな時に紅葉が見られるとは、まさに予想外のことだった。

 参考文章 紅葉と中華そば
 待つ程に旨し築地の中華そば席を譲りし此処では友達
 築地場外市場での一首。
 場外市場で朝餉を摂ろうとしたが、長蛇の列。十数分待たされたが、それでも頂く価値がある築地の中華そば。混雑している場所で頂くのだが、余所者が頂こうとすると、スッと席を作ってくれる。例え見知らぬ顔でも、此処では友達のように振る舞うのだ。

 参考文章 紅葉と中華そば
 あの頃の稲毛を想ふ碧い空三十路になりても旅はいい物
 嗚呼稲毛我を迎えし碧い空回想娯しき初めての旅
 稲毛海浜公園の近くで、青空を仰いだ時の二首。
 あの時稲毛を訪れた時の同じ、碧い空が出迎えてくれた。あれからもう18年近く経ち、私は三十路を迎えたが、旅はいい物である。
 そして、その碧い空を仰いでいると、(初めて旅した)1995年3月28日に訪れた時を回想してしまい、「旅」と出会えた嬉しさが込み上げてくるのだ。

 参考文章 稲毛海浜公園で心の転換
 新しき観光船追う冬鴎啼きて求むる客からの餌
 千葉港観光船での一首。
 新しくなった観光船が千葉港を走っていると、何処からともなく鴎が飛来してきて、観光船の乗客から撒かれる餌を求めてきた。

 参考文章 18年ぶりの再会のギリシャ船
 珍しき港撮せど偶然の撮らず悔しきギリシャ船かな
 ギリシャ船偶然撮れて大歓声十八年前の悔しさ晴れし
 千葉港観光船での二首。
 製鉄所を回っていると、何処かで見た文字が船尾にあった。ギリシャ文字だ。そう、18年前のあの日、珍しさの余りシャッターが切れなかったあのギリシャ船だ。この観光船に乗る度、ギリシャ船を探していたが何処にも無く、悔しい思いをしてきた。
 そしてこの日、同じ場所にあのギリシャ船があったのだ。18年間溜め込んできた思いを、デジタルカメラで収めた。18年前の悔しさが晴れたのだ。

 参考文章 18年ぶりの再会のギリシャ船
 稲毛でも千葉みなとでもスカイツリー対では如何か見えるか京葉
 千葉ポートタワーでの一首。
 この日は非公開の屋上に上れ、此処からの眺望を撮っていたら、稲毛記念館で見たスカイツリーが見えた。となると、スカイツリーでも此処が見えると言うことだが、実際京葉まで見えるのだろうか?

 参考文章 ポートタワーからの様々な眺望
 撮れずとも黄昏愛でし冬の猫
 新木場公園での一句。
 新木場公園は夕日が絶好の状態で臨める場所で、あの日と同様、夕日を撮る為に向かった。しかし、雲が邪魔でベストショットは撮れなかったが、黄昏空は見事だった。その黄昏を愛でるかの如く、猫がじっと座っていた。

 参考文章 新木場での夕陽
 師走旅特急列車を帰路に充て大いに褒めよ戻りし笑顔
 海浜幕張から特急列車に乗った時の一首。
 海浜幕張〜東京はほんの30分程度だが、自分を奮い立たせる為に特急列車に乗った。今日を振り返ってみると、あの日同様曇った気持ちが晴れたような気がする。

 参考文章 〆を飾る幕張新都心
 舞浜の百花繚乱冬合戦旧江戸川の屋形舟かな
 海浜幕張から特急列車に乗った時の一首。
 旧江戸川付近を走っていると、湾口になにやら明色の灯りが点っていた。屋形舟だった。丁度忘年会シーズンだ。相当賑わっているのだろう。先程通過した舞浜の百花繚乱のような遊園地と良い勝負をしているように見える。いざ、勝負!

 参考文章 〆を飾る幕張新都心


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