旅人の和歌帳 6


 ビリケンに幸福託す浪速人老いも若きも通天閣かな
 通天閣での一首。
 通天閣に鎮座している幸福の使者ビリケンに、幸福を祈る浪速(大阪)人。老いも若きも通天閣に行き、幸福を祈っているのだ。

 参考文章 絶景なり?! 通天閣
 道頓堀来てみてはしゃぐ東京人心境語るグリコの看板
 道頓堀での一首。
 道頓堀にでっかく掲げられているグリコの看板。これが、「大阪に来た」と実感できた東京人の気持ちが、グリコの看板と同じ表情なのだ。

 参考文章 道頓堀を歩いて
 昼餉時ふわトロたこ焼き格闘す東京人(よそもの)隠す道頓堀かな
 道頓堀での一首。
 昼餉は道頓堀川が見えるたこ焼き屋で頂いた。所が東京では見掛けないふわトロのたこ焼きに、東京人の私は悪戦苦闘。それを悟られ因縁付けられないように、必死に地元の人を装う道頓堀の昼餉。

 参考文章 道頓堀を歩いて
 鼻の穴潜るを笑い写真撮る「撮るな撮るな」と表情も笑み
 東大寺での一首。
 東大寺の大仏殿には、大仏の鼻の穴と同じ大きさの穴が一つの柱に掘られている。そこを潜る様を写真に撮る一行がいた。潜る様に笑いが出ていたが、「撮るなよ」と言った人も笑みが出ていた。歴史的建造物での息抜きだ。

 参考文章 想ひ出東大寺
 忘れ物手摺りに掛けしこの傘の露に濡れつつ我は旅路か
 紀勢本線での一首。
 誰のか判らず、何処から掛けられたのか判らない、手摺りに掛かっている雫が残っているビニール傘を見付けた。外は小雨が降っていて、その露に濡れつつ旅路に赴く私。

 参考文章 旅先の雨……
 春薄き伊賀の上野の朝霧のホットミルクティー温き息吐く
 2006年3月に伊賀上野駅で、買ったホットミルクティーを啜っていた時の一首。
 3月中旬なのに、春の気配が余り見られない伊賀上野。朝霧の駅の中で、ホットミルクティーを買って暖を摂った。温かさが全身を走り、ホゥと温めの溜息が漏れた。

 参考文章 関西本線モンタージュ(亀山〜島ヶ原)
 八重桜散りて降る雨佐那具かな
 関西本線佐那具駅での一句。
 上りホームに八重桜が咲いていたが、それを散らすかのような雨が降っていた佐那具駅の一コマ。

 参考文章 関西本線モンタージュ(亀山〜島ヶ原)
 隧道の対はお伽か深霧の大河原抜け笠置の花かな
 関西本線大河原〜笠置での一首。
 深い霧に覆われた大河原の隧道に入った。隧道の向こう側は全く見えない。もしかしたら、お伽の国に繋がっているのかな?
 その思いを巡らせている大河原を抜けると、花の名所で知られる笠置に到着する。

 参考文章 関西本線モンタージュ(亀山〜島ヶ原)
 大河原ICカード使えずに都会の知識使えずも良し
 関西本線大河原駅での一首。
 大河原駅で下車する人が、精算の為にICカードを差し出した。しかし、大河原駅ではICカードが使えず、現金精算となった。そのことにあれこれぼやきながら、現金精算して、下車した。(京都・大阪)都会からほんの1時間掛かる場所で、都会の常識になりつつあるICカードがまだ使えないのだ。でも、ドライに精算して無造作に降りるよりはいいのだ。

 参考文章 関西本線モンタージュ(月ヶ瀬口〜加茂)
 伊賀上野洋食屋でのハンバーグ雨止み嬉し一杯の珈琲
 伊賀上野の洋食屋での一句。
 洋食屋でハンバーグを頂いたら、先程まで降っていた小雨が止んできた。雨に降られることが嫌いな私には、何と嬉しいことだ。その嬉しさに小躍りし、食後の珈琲を啜るのだ。

 参考文章 伊賀上野の洋食屋


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