旅人の和歌帳 6


 朝顔や政党ポスター飾り隠す
 内房線八幡宿付近での一句。
 咲いている朝顔が、支持を訴えている味気ない政党ポスターを飾っているが、咲きすぎてしまったので、政党名を隠している様が面白かった。

 参考文章 内房線からの手紙
 夾竹桃水路のボート盛夏の絵
 内房線姉ヶ崎付近での一句。
 工業地帯に近い水路に沿って夾竹桃が咲いていて、その水路には(転覆している)ボートが1艘あった。その光景を捉えた。

 参考文章 内房線からの手紙
 パサパサと夏草を刈るローカル線
 久留里線での一句。
 伸び続けている夏草を刈るように、パサパサと音を立てながら列車は進んでいく。

 参考文章 上総の都会の久留里線
 館山や蜻蛉も泳ぐ空と海
 館山駅近く北条海岸での一句。
 海水浴客で賑わっている砂浜で、夏の空を飛んでいる蜻蛉を見付けた。(ふと秋の気配を感じるが)空と海、各々の場所で夏を娯しんでいるかのようだ。

 参考文章 館山で見付けた秋の気配
 蝉時雨長き時季待つ枇杷農園
 旅日記に掲載されていないが、内房線富浦付近での一句。
 富浦に停車したら、蝉時雨の中に収穫を終えた枇杷畑が見えてきた。次の収穫までひたすら長い時期を待ち続けるのだ。
 木更津のやっさいもっさい黄昏に旅人の朝もやっさいもっさい
 偶然出会った木更津港まつりの印象を、旅人視線で感じた一首。
 「やっさい もっさい」とリズム良く踊りながら行進する様は、とても娯しそうに見え、木更津港から木更津駅に向かう途中でこのテンポを憶えてしまい、鼻歌でも歌ってしまった。
 その「やっさい もっさい」が印象的で、翌朝でも残っていたのだ。

 参考文章 旅の終わりに「やっさい もっさい」
 鎌取や緑に驚き誉田土気千葉市の内かと驚く緑
 外房線鎌取〜大網での一首。
 鎌取付近は緑に覆われた箇所があり、小さな畑を持っている民家も見られた。更に誉田(ほんだ)、土気(とけ)になると、車の往来が余りなく、田畑が見られる長閑(のどか)な景色が続いている。
 此処は一体何処なのかと思ったら、紛れもなく千葉市なのだ。駅周辺が賑やかで、列車が頻繁に往来している千葉駅周辺と想像すると、緑に囲まれたこの場所の存在に驚いてしまう。

 参考文章 外房線のスーパートリック
 ローカル線満員御礼缶麦酒マリンスポーツ真夏の宴
 外房線上総一ノ宮駅での一首。
 乗り換えた列車内は、座席が埋まっていた。これから海水浴場の方へ向かうのだろう、缶麦酒を啜る人もいれば、(マリンスポーツの)サーフボードを抱えて到着を待ち焦がれている人もいて、真夏の宴さながらの光景だった。

 参考文章 外房線の夏模様
 田舎駅停まりしタクシー運転手団扇で扇ぎて客を待つ時
 外房線長者町駅での一首。
 駅前に1台のタクシーが停まっていて、運転手が団扇で扇ぎながら客を待っていた。

 参考文章 外房線の夏模様
 娯しかな日陰でスマホ休憩時
 外房線大原駅付近での句。
 午前中の僅かな休憩に、日陰でスマートフォンを操作していた。その表情は何とも娯しそうだった。

 参考文章 外房線の夏模様


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