旅人の和歌帳 8

「私の旅日記」と併せて、ご覧下さい。

 春飾り芽吹きし築地の中華そば春便り流すラジオ嬉しき
 上着脱げて素直に愛でし中華そば丼の縁に桜入りたり
 碧空の朝餉に旨し中華そば桜吹雪に頂く手止む
 勝どきの姿を見せぬ都鳥家庭の許かと驚く年月
 朝餉後の桜吹雪の夢の島幻惑に酔ふ今は現か
 桜散る温む春風碧い空
 また碧き稲毛の空は迎えたりあの日の感動粧ひ変わらず
 また碧き稲毛の空に酔ひしれて旅に赴く得しに微笑む
 青松の生長麗し春の海あの日の眺望逢えぬ還らぬ
 春晴れの芝生で遊びし家族連れ穏やかな海の芽吹きし青松
 漣の寄りて抱かれ砂浜の成せる恋路に愛でし青空
 春の浜漣に逝る海月かな
 様々な思ひ出刻む防波堤あの日を偲べ再来の時
 千葉みなと鴎が追ひし観光船我と出逢ひし女子と思へば
 千葉みなと鴎の主が船ならば相思相愛奮ひし情熱
 海風に吹かれて揺れる観光船これまた娯しと興奮一入
 目を醒ませ飛沫砕きし回想の逢ひし女の遠き思ひ出
 金網に囲まれ窮屈展望台行きし港も遠き街並み
 見渡せば工業港と市街地の近くの森林安らぐ田園
 亥鼻で葛餅頂くお望みの桜吹雪が皿に降りたり
 満開の桜を愛でど散り気味の風流愛でる日本人かな
 友達と電車通学桜散る常の景色や思ひ出なるらん
 蘇我駅で時間調整カツ丼を頬張る平日あな贅沢なり
 非日常の旅の食事は如何なれど極めし贅沢一人微笑む
 宝石は夜の帳に守られて触る勿かれと艶めく輝き
 霍乱に短さ悟る痩せ身かな
 桂川朝釣り浮かべて梨囓る紅葉の頃の錦秋恋しき
 鈍行で思ひ巡らす旅籠かな鄙びし街道鄙びし梁川
 通学の学生姿に頬染める遠き昔のこととは思わず
 旅の脚通勤通学様変わる呉越同舟鈍行列車
 向日葵や新府の里は夏の余韻穴山駅は芒の漣
 車窓から寄りても寄れぬ僅かなる諏訪湖を望みて塩尻へ去る
 小学校組み体操のホイッスル倣ひて舞ひし蜻蛉の群
 迫り来る台風の前の信州でそばを啜る手尚穏やかなり
 リベンジできしめん啜る在来線時間に追われぬ心境勝る
 遠足の小学生に席譲る元若者の痩せ我慢かな
 おともだち桜吹雪に逝る月日
 旅籠から旅籠へ泊まる燕かな
 容赦なき関所越えればお娯しみ夜まで続く旅籠の賑わい
 図らずも旨い伊賀肉再会すすき焼きの湯気に涙溢れる
 伊勢牛と松阪牛と伊賀牛と食べ較べする贅を超す贅
 その贅は心療内科の常備薬取り出す時こそ夢が醒めども
 蛤を食わずに通れぬ桑名宿抓む野点に躑躅咲きたり
 買う物も無くて漫ろで素通りすその脚止める焼き団子かな
 青空と若葉を纏うサンルーフ
 華々しきコスプレ娘を撮るカメラ高性能で悄気るデジカメ
 華々しきコスプレ娘撮る時は素人玄人変わらぬ華撮る
 陽春のコスプレパレード世は平和銃も剣も盛り立てる武器
 メイドカフェ大人の扇子で顔隠す粋人気取りの独身貴族
 メイドへの川越土産手渡せず冊子残して旅立つ旅人
 何時の間に愛したユニット成長し老若男女が集う大木
 君去りし名残を惜しむ餞別の誰と娯しむ来年の躑躅
 あの日から出逢ひしユニット幾星霜最後の一人が巣立つ寂しさ


トップへ
戻る



Produced by Special Mission Officer