旅人の和歌帳 2
「私の旅日記」と併せて、ご覧下さい。
曇り空何処が果てかと空を見る晴れ間を望む遠き旅路か
幕の内頬張る朝の心地良さ今日も頑張る意気込み強し
晴れ薄く遠くの海と春便り春かと疑い眼鏡を矯す
群れを成す真鯛の姿シャッターを押す間難し春の海かな
田舎駅夕焼け小焼け春の旅
仁右衛門の岩場に立ちて南の浜風強し菜の花匂う
五月晴れ雅楽に浮かれる旅の脚
躑躅散る哀れを悼む雅楽かな
庭園の植木の緑も鮮やかに周りに映ゆる躑躅の紅
白い石躑躅の紅に葉の緑黒も彩る燕の親か
池ノ浦辺の小さな臨時駅過ぎ去る列車出番を忘れ
漣が寄せては返す池ノ浦浦に消えたり夕立の騒々
昼下がり競りが終わりし長島の静かな漁港鴎飛びけり
根府川のホームを望みし相模灘暗き漣春は名ばかり
四つ半の沼津の傍のラーメン屋出でし客の胸元締める
酔ひ回り頬杖の先のラーメン屋湯気温かし秋の真夜中
朝ぼらけ晴れし山陽伏し拝む晴れを望みし対の山陰
山見れば冬を隠せぬ伯備線山の頂雪は降りける
雀来し供物の米に大社かな
注連縄に五円投ぐ音霰かな
黄昏れて紅葉彩り舞ふ風船
黄昏に響く子供の喜々の声約束交わす帰路の訪れ
紅と白塩見の土塀の梅の花不昧の城に雪は降りける
雪降りし塩見縄手の梅の花知らば伝えよ桜の咲く頃
風寒し弥生も冬か津和野かな
乙女とは名ばかり美し殉教の儚き命弔う粉雪
雄雌の鴨が集いし菜の花が咲けど風も水も冷たし
白狐湯気の幻湯田の街
春恋し常緑被う五重塔梅散る時の西の山口
埴生
(はぶ)
越えて遠くに聳える関門の春は来たかと隠す靄かな
春来れど旅する男は孤独なり
椿散り霧笛轟く和布刈かな
赤間まで霧笛届けば阿弥陀寺の今に伝える芳一の琵琶
子は娯し老は懐かしSLの汽笛娯しみ彩る紅葉
熟れた柿揺らして落とす汽笛かな
鍋倉の紅き紅葉林檎かな
此処は皆子供になりしSLの手を振る人も無邪気な子供
堀の鯉早春に来し我知らば餌を飲み込む姿愛しき
暑き街清流麗し外の森
相模川九月の炎天身に受けて水上スキーの軌跡を辿る
グリーン車で優雅に涼めば蝉の声斃れるときまで栄華極めん
いそいそと黒蟻蝉の翅運ぶ
炎天下詣りに旨しかき氷
夏過ぎて熱海海岸黄昏れてビーチバレーの歓喜明るし
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