旅人の和歌帳 3
「私の旅日記」と併せて、ご覧下さい。
東京から去りし113系写真撮る弥生十八日浮かぶ面影
名残惜しき113系グリーン車の座れし羨望あな面白や
門前の琺瑯看板懐かしや開店前の門前彩る
春雨に煙る熱田の宮詣で熱き豚まん湯気も煙りし
清き水サラサラ流れる大垣の寄りし桑名の栄えを尋ねる
長良川辺に留まりし屋形船帰路に乗れぬ悔しさ流せ
一人席座れる嬉しさ殿様か
夏の夜行通路を埋めし人集り引揚船にも然も似たりけり
一株の桃色紫陽花長篠の朝の涼しさシャンと引き立つ
朝蝉や車内に響きし奥三河
唐笠港舟を迎えるアヒルたち日陰で餌やる家族連れかな
改札を受けずに通る蜻蛉の気儘な旅よ時を気にせず
迫り来る台風の猛威目前の晴れ間に娯しむ鈍行の旅
蝉時雨木許に転がる亡骸の短き栄えを哀れむ赤坂
台風に気持ちあらば好天に明日の天気を大須の大吉
一人旅大須の門前珈琲と独り身の苦さ誰に語らん
夏の日に飲みし珈琲この苦さ苦さ変わらぬ私の人生
墓参り見付けし紅梅頬染める赴く熱海は梅花繚乱
カルガモや間近の春を愛でながらお濠を泳ぐ姿も温し
踊り子号函は行楽の賑やかさ鈍行グリーン車負けじと賑わう
西湘に東京には無き梅が咲き東京の住人愛でし羨む
来宮に春一番が吹き付けば新幹線の騒音娯し
梅園の途中の坂の柑橘をもぐ術叶わず眺む悔しき
梅園や紅白色付く小雨かな
砂浜で子供の無邪気な砂遊び知らぬが華か砂上の楼閣
四街道通学学生犇めいて垂れし稲穂にここに秋知る
新学期列車を騒がす学生等黄金の稲穂に話弾ます
駅前で野良猫達の集会は去りし今夏の思ひ出話
鹿島にて夏の蝉の音聴きながら収穫で知る秋の涼しさ
汲み入れし御手洗池の冷たさを手に触れ喜ぶ長月の旅
絵葉書もテレカも無かりし鹿島にて詣りし跡無しメール打つ気無し
ノンビリと事に勤しむこのゆとり駅も車内も秒針を知らず
秒入らぬ駅で休みし秋風に絶えず吹かれるたこ焼きの湯気
たい焼きの湯気を熱がる秋の晴れ
この暑さこの潮風で癒されば吹きし口笛怒涛に消されず
憧れの灯台頂き海眺む暑さ掻き消す大海の風
海終わり陸が始まるこの土地に幸せ誓う若き旅人
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