旅人の和歌帳 5

 稲刈りと汗拭く農夫土岐の郷
 東濃や彩る陶器田の色も
 中央本線土岐市と瑞浪(みずなみ)での句。
 上の句は土岐市付近。車窓から稲刈りをする農夫が一休みして、汗を拭いている土岐の光景が見えた。
 下の句は瑞浪付近。この周辺は美濃焼の産地で、窯場が見られるのが特徴。陶器は同じ色が2つと出来ず、微妙に異なった色合いが面白いが、田圃の色も実り具合によって、異なった色合いをしているので面白い。
 「東濃」は土岐、瑞浪が位置している岐阜県南東部のこと。

 参考文章 ビヤガーデンの気休めに……
 五平餅歩いて頬張る馬籠宿焼売抓む姿如何にぞ
 馬籠宿での一首。
 五平餅を売っている店が点在している馬籠宿。観光客は五平餅を頬張りながら、馬込宿を歩いている。そんな中、横浜名物の焼売を抓む姿はどう映るのだろうか?

 参考文章 中山道馬籠宿(前)
 夏の服纏ひて馬籠秋の風
 馬籠宿での一句。
 馬籠宿を散策している観光客は夏の服を纏っているが、吹く風は涼しい秋の風だ。秋は目の前だ。

 参考文章 中山道馬籠宿(中)
 馬籠から山奥の郷垣間見る外れた民家の秋の暮らしを
 馬籠宿での一首。
 馬籠宿の北の外れで、山奥の里の一コマを見た。そこには宿場町とは違った秋の光景が見られた。

 参考文章 中山道馬籠宿(中)
 マイアミや今年で終わるビヤガーデン新たに粧ふその日指折る
 大名古屋ビルヂングビヤガーデンでの一首。
 ビル建て替えの為に、今年で(此処での開催が)終わるこのビヤガーデン。新しく出来、ビヤガーデンが再開されるその日を楽しみにしている。

 参考文章 再会の約束を交わして
 通勤に紛れて座る旅姿素なれど豪華モーニングかな
 名古屋でモーニングを頂いた時の一首。
 通勤客で賑わう平日の朝のカフェに、人知れず一人旅姿がいる。トーストとゆで卵、飲み物だけのモーニングだが、旅になると豪華に感じる。

 参考文章 平日の秋の旅は特急列車に揺られて
 自由席探し求めて徒競走名古屋駅での運動会かな
 名古屋駅での一首。
 特急列車の自由席を探すのに手間取って、思わず走ってしまった。この時期は運動会シーズンという事もあり、「徒競走」という運動会の要素を取り入れた。「旅」と「運動会」という掛け合わせが何とも珍妙だ。

 参考文章 平日の秋の旅は特急列車に揺られて
 一人旅吹かれて見送る芒かな
 東海道本線稲沢付近での一句。
 芒(すすき)が風に吹かれて、一人旅の私を見送っている。

 参考文章 平日の秋の旅は特急列車に揺られて
  秋桜に秋の赤色奪われて枯れ時待つ身彼岸花かな
 高山本線飛水峡付近での一首。
 車窓から咲いている秋桜(コスモス)を見付けた。秋が深まっていく証拠だ。これからの赤は秋桜の赤で表現することになるので、枯れ掛けている彼岸花はその座を奪われて、枯れる時を待つ身になってしまう。

 参考文章 飛水峡と中山七里
 喜劇王柳葉吹かれる秋の下呂
 下呂温泉での一句。
 柳が植わっている川沿いに架かる橋に、あの喜劇王チャップリンの銅像があった。秋風を受け、柳葉がサラサラすれる音を聞きながら座っている。秋の下呂温泉の一コマ。

 参考文章 平日の下呂温泉


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