2012年1月7〜8日 初詣旅行和歌集

(2012年1月7・8日) 初詣旅行和歌集 1


 詣。大抵の一般大衆は一年の幸せを願って、参拝するのだが、この私は初詣の経験は僅か1回だ。川越在住時代だが、親戚と一緒に参拝したが、喜多院か成田山別院か判らない。八王子に移住しても、初詣に出掛ける機会は予算云々で殆ど恵まれなかった。かといって、近場の高尾山や高幡不動では済ませたくない。わざわざ観梅するのも熱海(熱海梅園)か水戸(偕楽園)にしている位だから。
 この私も三十路も半ばに入りつつあり、今年は是非変化ある年にしたいなと思う。その予兆が新年早々現れた。旅費や3連休、更に天気の良さが重なって、今年は初詣に出掛けられる目処が立ったのだ。
 参拝先は熱田神宮と伊勢神宮と参拝し慣れた場所だが、初詣となれば特別な印象がある。日本各地から参拝客が押し寄せて、何時も以上の殷賑を極めるからだ。
 久し振り(正確に言えば「初めて」かも)の初詣なので、初詣に関係した和歌を認めてみた。でも、初詣一色だと飽きが来るかも知れないので、鈍行で静岡に向かった時の光景、名古屋競馬場で初競馬を行った時の光景、松阪のシティーホテルでワインを飲みながら、初詣の夜を過ごした時の光景、そして、帰路の途中で名古屋の大須観音に立ち寄った時の光景も一緒に綴ってみたい。


 初詣朝日凛々しき寒夜斬る海に顔向く相模灘の朝

 詣では久し振りにJR東海373系に乗車した。これは、「(ワイドビュー)ふじかわ」・「(同)伊那路」に使われる特急車両だが、東京5時20分発なので、どんなに頑張っても、八王子駅の一番電車の中央本線では乗車出来ない。しかし、横浜線の一番電車で橋本に向かい、そこで相模線の一番列車に乗れば、茅ヶ崎で前述の電車に乗車出来る。しかし、日の出はまだのようで、手袋を取ると、針のような凍えた冷気が襲う。
 日の出が望めるのは根府川を過ぎた時。根府川周辺は海側に遮る物が無いので、相模灘が一望出来る。海側の席に陣取って日の出を撮りたかったが、席が空いていたのは山側の通路側。やむなく、此処で日の出を撮影した。だから、写り映えは良くないし、(カメラの電池を入れ替えたので)日付も間違えた。空気が乾燥している冬なので、日の出の色合いがとても鮮やかで、茅ヶ崎で電車を待っていた時の寒さを一刀両断の如く斬り捨てるようだ。起きている乗客の殆どが、この日の出を眺めていた。初詣だとしたら、その美しさは格別だ。


 冬の朝悴み堪えてメール打つセーラー服の黒鮮やかに

 海を過ぎると、時間帯はもう通勤通学。旅姿と一緒に通学する高校生がチラホラ見られた。東京からだと、静岡まで距離を稼げる絶好の長距離列車だが、この辺りになると、単なる静岡行きの電車にしか見られない。車内では、この列車の存在感の違いを、衣服や荷物でもって静かに論議しているように見える。
 そんな中、片浜駅で見掛けた光景。手袋を取ると悴みそうな冬の朝、それを耐えてメールを打っている黒いセーラー服の女子校生。確実にボタンを押している姿はもとより、寒さの所為だろうか、セーラー服の黒が鮮やかに見える。


 真昼でも北風荒ぶ競馬場寒さ嘲る眼は真剣

 行と新幹線を乗り継いで、名古屋に到着。名古屋界隈の初詣で有名な場所は熱田神宮だが、時々立ち寄っている名古屋競馬場が開催中だとネットで知ったので、立ち寄ったのだ。初詣ならぬ、「初競馬」をしようではないか!
 真昼でも北風が吹いている名古屋競馬場。パドックに集まった来場者は、そんな寒さを全く気にすることなく、馬を真剣に見定めている。寧ろ、北風吹く時期でも防寒することなく、レースに出走する馬の根性を見習って、寒さを嘲っているように見えて面白い。

 上は相模灘の朝日。
 下は名古屋競馬場のパドック。



(2012年1月7・8日) 初詣旅行和歌集 2



 初詣熱田の宮で新しき長財布からドルを抜き出す

 詣で賑わっている熱田神宮。
 参道には普段は全く見掛けない露店が出ていて、参拝者を迎えている。でも、熱田神宮は草薙剣を奉納している他、東海道の宮宿のモデルになった神宮なので、参道脇で露店の食べ物を抓んでいる姿は何処か行儀悪いが、熱田神宮に初詣出来た嬉しさがあるとすると、許容範囲だろう。
 本殿には多数の参拝者が犇めいて(ひしめいて)いて、白布が敷かれた特別に設けられた場所に、賽銭を投げていた。殆どが小銭だが、これは気の持ち用だ。いい年になるよう祈り且つ行動しよう……。
 とうとう、初詣が出来るのか。その嬉しさが昂ぶってきて、新しく買った長財布から、(粋がって)1ドル札を抜き出して、賽銭に充てた。1ドル420円・360円時代を知る人達にとっては、卒倒する事だろう。1ドル78円前後のドル安だから、スンナリ出せる所がニクイ。


 松阪で初焼肉に飲むワイン明日に詣りしお伊勢を思う

 阪で宿泊する時、夕餉は殆どホルモン焼肉にしている。松阪は松阪牛で有名な町だが、牛に麦酒を飲ませたり、焼酎でマッサージをしたりと丹念に育てているので、地元でもやはり高い。しかし、ホルモンでも松阪牛には変わりないので、お得感がある。そこに目を付ければ、余計な出費が防げるのだ。初詣とは言え、散財は出来ない。
 そのホルモン焼肉を夕餉にし、ホテルに戻り(ノンアルコールながら)ワインを飲んでいた。
 明日は伊勢神宮に初詣に行く予定だ。伊勢神宮の初詣の殷賑振りは、何度もテレビや写真で知っているが、まさか、伊勢神宮に初詣に行ける機会に恵まれるとは、嬉しさは格別だし、ノンアルコールワインを飲んでいるが、酒精特有の興奮作用が利いてきたのか、気が昂ぶってくる。何だか、夕餉の焼肉も、飲んでいるワインも価値ある物に感じ、テレビも見ないで、その優越感に浸りつつ、優雅(?)に過ごした。

 写真は初詣の時期の熱田神宮。



(2012年1月7・8日) 初詣旅行和歌集 3




 初詣お伊勢参りの賑わいにドルの賽銭視線を娯しむ

 はり伊勢神宮の初詣は人出が凄かった。外宮から内宮へ向かう途中、路線バスに乗ったが、途中で渋滞に捕まってしまい、途中のバス停で降りて、歩いて内宮に向かった。
 その門前のおかげ通りも、各地から初詣に来た参詣客で殷賑を極めていた。様にまとめ買いした赤福の袋をぶら下げながら、各々の店を回っている姿が何とも面白かった。
 人の波を上手く縫うように歩いて、内宮に向かったが、宇治橋の大混雑に辟易寸前の上、内宮の手前の石段は大渋滞。特に中央は正殿が見えるという事で、列を成していた。しかし、此処で時間を費やすにはいかないので、脇を通って参詣した。
 そんな中、此処でも長財布から1ドルを取り出して、賽銭に充てた。周りの参詣者はどんな目でこの賽銭を見ているのか、その視線を一人娯しむのだ。


 冬晴れの吹かれて耐える松葉かな
 冬晴れの伊勢に詣りし一服に東京の喧噪思うべからず

 詣を終えたが、時間が昼食時間で、その上初詣で大混雑。行き付けの店は待ち時間が相当掛かるので、手頃の伊勢うどんで済ませ、食後のデザートという事で五十鈴茶屋に向かった。此処は赤福直営の店で、赤福の他に季節の和菓子が、掛け軸が掛かっている床の間がある畳の部屋に、綺麗に手入れされた和風庭園が見えるという風情満点の場所で頂けるのだ。普通の赤福の店で済ませるのもいいが、折角伊勢神宮に初詣に来たのだから、頂くのならば、風情ある所で頂きたい。
 正座で抹茶をお手前で頂き、庭園を眺めて一休み。
 庭園に松が植えられているが、この冬でも常緑なのが何処か嬉しい。北風に吹かれても、寒さをもろともしない松葉が愛おしく感じる。
 まだ時間はある。東京のようにいちいち時計を見る、みっともない所業は控えて、ゆったりとした時間に身を委ねるとするか。

 凶出れど回れば大吉大須かな

 勢を発ち、東京に帰る途中、名古屋の大須観音に立ち寄った。此処もやはり初詣で賑わっていた。毎年必ず伊勢神宮に参詣しているが、此処に立ち寄らないと気が済まなくなっている。「東京には無い娯しみが詰まっている」と言えばいいのか……。
 お神籖を引いたが、何と珍しく「凶」を引いてしまった。悔しかったので、もう一度引いてみたら「小吉」。チンケな気分で発ちたくなかったので、もう一度引いてみたら何とか「大吉」が出てきた。
 1回目のお神籖で「凶」が出てしまったが、大須の門前商店街を歩けば、一気に嫌な気分が晴れる。行き付けのカフェでちょっと贅沢にブルーマウンテンを注文し、会計で大須観音の初詣イベントなので、抽選に応募したらいい品物が当たったし、大須門前のイベントの日程が明記されているカレンダーも手に入れた。更に、大須発のローカルアイドルユニット「OS☆U」のサイン&握手会にも遇った。別の場所で知ったのだが、東京で開催された日本各地のローカルアイドルが出演するイベントに出場出来たそうだ。自分の事のように嬉しく感じた。一番良いのは、大須に拘る姿勢を貫いている事だ。此処は名古屋名所の一つだ。大須の魅力を大いに発信し給え。
 と、「凶」が「大吉」に大変身してしまう、そんな力を秘めている大須なのだ。

 上3枚は初詣の時期の伊勢神宮とおかげ通り。
 下は同時期の大須。





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